第6回 イギリスラフバラ大学大学院 窪田光祐氏

目標を持ってそれに向けて行動している学生はチャンスをつかんでいる

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今回のライフインタビューズは、イギリスのラフバラ大学大学院 スポーツコーチング専攻でコーチングを学んでいる、窪田光祐んに、お話を伺いました。

 

 

Q:イギリスのラフバラ大に進学しようと決めたきっかけ(経験、本、出会い、夢など)と目的は何ですか?

 

窪田 サッカーのコーチングについてもっと学びたいと思ったからです。

日本で7年少年サッカーのコーチをやっていて自分のコーチングに限界を感じ、もっと学ぶ必要があると強く感じ、特にプロのコーチとして生きてくためにはスポーツサイエンスの知識が必要と感じました。(日本の大学時代は教育学を専攻)。9割以上の方々は留学に反対したが、両親と留学経験のある方たちは賛成してくれ、それが後押しとなり留学しようと決意しました。

 

Q:留学先はどうやって決めたのですか?他の国の大学にも候補はありましたか?

 

窪田 イギリス一本で考えていました。それはイギリスがサッカーの母国であり、さらに自分の英語力も向上できると思ったからです。大学に関してはラフバラ大学のスポーツ科学部とリバプールジョンムーア大学のサッカー科学部の2つを考えていました。

 

 

Q:イギリスのラフバラ大に進学するときに苦労したことは何ですか?また、どうやってその困難を乗り越えましたか?

 

窪田 当たり前ですが、大学進学の手続き、交渉を全て一人でやったこと、またイギリスの大学進学に必要なIELTSという英語試験の点数を上げることが大変でした。僕の弱点はスピーキングだったのでSkype英会話を通して点数を上げ、その他の科目の点数(リーディング、ライティング、リスニング)を上げるために1日最低10時間は勉強していたと思います。

 

 

Q:日本の大学とイギリスの大学の違いは何ですか?

 

窪田 課題の厳しさ。いい点数を取るためには授業でやったことにプラスして自分で関係のある論文を調べ、盛り込まなければならないです。また意外と暗記もの(スポーツサイエンスで必要な知識に関するもの)が多いことに個人的には驚きました。

社会生活では、大学内にパブ(イギリス風居酒屋)やクラブ(ディスコ)があり、毎週水曜日は大学で試合が終わった後、選手とコーチでパブやクラブに行って交流することが当たり前となっています。日本との文化の違いをここでも感じました。

 

 

Q:ラフバラ大学にはどのような目的を持った学生がいますか?学習に対する意欲について日本人との違いはありますか?

 

窪田 プロのコーチやストレングス&コンディショニングコーチになりたい学生、スポーツ心理学者になりたい学生などスポーツ科学部にはスポーツに関わった仕事をしたい学生がたくさんいます。

学習に対する意欲に関しては日本と同じく人によりけりです。でもしっかり目標を持ってそれに向けて行動している学生はやはりしっかりチャンスをつかんで自分の道を作って行っていると感じます。

 

 

Q:ラフバラ大学に進学をして良かったと感じることは何ですか?

 

窪田 まずは目標であったスポーツサイエンスに関しての基礎知識を学ぶことができたこと、ヨーロッパのコーチングライセンスを取得することができたこと、イングランド特有のコーチングスタイルを肌で感じたことができたことがよかったです。

あとは少々の失敗ではへこたれなくなったこと、気持ちの切り替えが早くなったこと、タイムマネージメント能力が上がったことが自分では良かったと感じます。

スポーツコーチングをアカデミックに研究している

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Q:ラフバラ大学ではどのような勉強、研究をしていますか?

 

窪田 大学ではスポーツサイエンス学部に進学し、基礎的な知識(運動生理学、バイオメカニックス、スポーツ心理学、スポーツ社会学、スポーツ栄養学など)について学びました。

卒論ではプロクラブチーム(2部)の下部組織の選手の運動能力と家族構成の関係性について研究しました。

 

 

Q:ラフバラ大学大学院修士課程ではどのような研究をしていますか?

 

窪田 スポーツコーチングというものについてアカデミックに研究しています。そして授業で学んだものを自分のコーチングに当てはめて分析・評価するということを、1年を通してして行っています。
修論ではコーチの行動分析と選手への影響ということについて、日本人のコーチを対象にある分析ソフトを使って解析しようと思っています。

 

 

Qラフバラ大学での一日(一週間)の流れを教えてください。

月曜日

朝:大学チームのコーチング

昼:勉強

夜:大学1軍の練習見学orU21プレミアリーグ観戦
火曜日

朝〜昼:勉強

夕方:地元のU11チームのコーチング

夜:大学の1軍の練習or試合観戦

 

水曜日

1日大学の試合の準備とコーチング

 

木曜日

朝:勉強

昼:大学の授業

夜:大学チームのコーチング、大学1軍の練習見学

 

金曜日

朝〜昼:勉強

夜:授業

 

土曜日

1日大学院の授業

 

日曜日

U11チームのリーグ戦

来週への準備

ユーモアを挟んで選手がトライしたことを褒めて指導している

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Q:イギリスで生活を始めて感じた日本との生活スタイル、イギリス人の価値観などの文化の違いは何ですか?イギリス人と日本人が大切にしている価値観の違いは何だと思いますか?

 

窪田 生活スタイルの違いとして感じるのはとにかくイギリスは日本以上に家族が中心、大事にしているということ。大学の選手でも週末や休みには実家に必ず帰るし、フェイスブックにも家族の写真がよくのります。

僕が好きなイギリスの文化は「笑顔でありがとうと必ず言うことと褒め言葉が多いこと」

例えばバスから降りるとき、どれだけ見た目がいかつい人でも運転手に「ありがとう」と言って降りるし、カフェやスーパーの店員さんも必ず笑顔でコミュニケーションを楽しみます。

サッカーでいうと、特に良いコーチは選手がいいプレーをした時は、”Well done!”以外にも Fantastic! Superb! Terrific! Top man! Brilliant! 」などかならず褒めます。逆に失敗した時は”I like your enthusiasm「君のやる気すごくいいね!」”などのユーモアを挟んで選手がトライしたことに関してまずは褒めて指導します。

もっと驚いたのが、試合中相手チームの選手がいいプレーをした時もその選手に対して褒めることです。

 

 

Q:イギリスをはじめ、日本人が海外で活躍したり、評価されるにはどのようなところを伸ばしていく必要があると思いますか?

 

窪田 まずは自分の強みをはっきりさせること、それをその国のスタイルに合わせることだと思います。日本人としての強みとして感じるのは、日本人が当たり前だと思っている「時間を守る事ときめ細やかさ」だと感じます。最初から認められようと思わず、自分ができることを誠実にコツコツと積み重ねていくことで評価されていくと感じます。

 

 

Q:外国で生活をすると、様々な国の人と生活をしたり、その国独自の文化があると思います。うまく馴染めない文化や異国の人間関係を受け入れなければ行けない時、どのように受け入れていますか?

 

窪田 自分の常識やこだわりをまずは横に置いて、相手を最初から拒否せず認める事だと思います。それを通して新しい楽しみも見つけることができると思います。ただ本当に合わなかったら離れることも一つの選択肢だと思います。

 

サッカーに求めるものは「激しさ、戦う姿勢」だが、「サッカーを楽しむ」ことが根底にある。

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Q:イギリスでは現在どのようにサッカーに関わっていますか?

 

窪田 現在はラフバラ大学の4軍のチームと地域のクラブのスリングストンFC U-11をコーチしています。ラフバラ大学の4軍はMidland地域3Bリーグで2位、U-11はレスターリーグで無敗優勝をすることができました。

 

 

Q:指導者としてチームに関わる中で、日本人とイギリス人の選手の違いを感じるところはありますか?

 

窪田 イギリスの方が監督と選手の距離が近いと感じます。例えばハーフタイムの時に僕の言ったことに関して意見があれば大学生でもU-11の選手でもしっかり言ってくれます。それはネガティブなことではなくて、勝つためによりよい方法を作るために良い相互作用になっていると感じます。

またトレーニングがつまらない時(リアルな状況じゃない時)は全然集中しません。逆に目的がはっきりしている時、リアルな状況の練習にはものすごい集中力で練習に取り組みます。コーチとしては1回1回のトレーニングが勝負です。

 

 

Q:指導者のサッカーへの取り組む姿勢、選手のサッカーに取り組む姿勢は日本と違いを感じますか?

イギリス人はサッカーをすること、指導者として関わること、スタジアムで観戦することにどのような価値観を持っていますか?

 

窪田 イギリス人の美徳、サッカーに求めるものとして「激しさ、戦う姿勢」というものがあります。指導者も選手にまずはそのことを求め、選手もそれはわかっています。それはプレミアリーグでも地域リーグでも一緒です。

ただ根底にあるものは「サッカーを楽しむこと」だと感じます。いい指導者は激しさを求めることに加えて、選手ひとりひとりとリスペクトを持って接し、コミュニケーションをとってポジティブな関係、環境を作っていくのがうまいと感じます。

 

 

Q:イギリスと日本のサッカーの文化の違いは何ですか?どういうところで違いを感じますか?

 

窪田 「激しさ」です。日本であまり見られなくてイングランドでよく見られるのが、体を張ったディフェンスやスライディングタックルでボールを取ったとき、観客席から大きな拍手が送られるところです。また試合後パブに行ってビールやりんご酒を飲みながらコミュニケーションを取るのもイングランドの文化です。

 

 

Q:マンチェスターシティのアカデミー通訳をすることになった経緯を教えてください

 

窪田 ラフバラ大学には日本スポーツ振興センターの支部があります。その知り合いの方からお話をいただき、筑波大学の監督の通訳として帯同させていただけることになりました。

 

 

Q:マンチェスターシティのアカデミー通訳を通して学んだことは何ですか?

 

窪田 通訳の仕事ももちろんですがマンチェスターシティという世界トップクラブがどのような取り組みをしているのか(クラブ哲学、クラブの仕事、試合までの流れ(トレーニング)、データ管理、タレント発掘・育成など)ということについていろいろなことを学ばせてもらいました。

 

優秀な人は人一倍失敗も多くしている

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Q:日本にいる時の英語学習方法、イギリスに来てからの英語の学習方法について教えてください。

 

窪田 まずはなぜ英語が必要なのか、どのくらいの英語力が必要なのかということをはっきりさせることが重要だと感じます。

僕の場合は日本にいるときはIELTSの点数が必要だったのでその勉強を通して英語の勉強をし、イギリスに来てからは大学の授業の勉強(授業の予習復習)、日常会話、そしてコーチングに必要な英語を学んでいます。日常会話に関しては英語のドラマを見てシャドウイング、通学の時に英語のポッドキャストを聞きながらシャドウイング、そしてサッカーを通して地元の方たちと会話することを通して勉強しました。コーチングに関しては練習見学をしていいコーチがどういう英語を使っているかを聞いてメモして学びました。

大切なのは目的を持って継続することだと思います。

 

 

Q:これから、異国に留学を考えている人が語学(英語)と同じくらい学んでおいたほうがいいことはありますか?

 

窪田 自分の強み、武器を磨くことだと思います。また趣味(スポーツや音楽など)がイギリス人との交流には本当に役に立つと思います。僕の場合は英語ができない時もサッカーを通して多くのイギリス人の方と交流することができました。

 

 

Q:大学進学を考えている人へアドバイスをお願いします。外国の大学と日本の大学に進学をするのはどちらを薦めますか?

 

窪田 本人の目的や将来のビジョンによると思います。僕は日本の大学が海外の大学より劣っているとは一概に言えないと感じています。もし学びたいことが海外にしかなかったら是非海外に行くことをお勧めします。ただ今まで出会ってきた人たちを通して思うのは、優秀な人は人として魅力的で、日本の大学で学んでも、海外の大学で学んでもきっと結果を出しているだろうなということです。

 

 

Q:海外の大学に進学をして学びたいと思っているが、外国への一歩が出ない人の為にアドバイスをお願いします。

 

窪田 僕がこっちに来て感じるのは優秀な人は人一倍失敗も多くしているということです。今までいた心地よい環境を捨てて、まったく違う環境に行くことはもちろん怖いし失敗することも多いと思いますが、意外と来てしまえばなんとかなるもの、そしてその分得るものも多いので、留学できる機会があればしたほうが絶対いいと思います。

 

夢は日本のコーチング文化の発展、スポーツに関わる人たちの幸せに貢献すること

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Q:イギリスでの生活、ラフバラ大学での生活で、充実した日々を過ごす為に普段から心がけている習慣や考え方はありますか?

 

窪田 好きな言葉が3つあります。

Destiny is no matter of chance, it is a matter of choice. It is not a thing to be waited for, it is a thing to be achieved.

人間が最も成長するときは、自分にとって達成できるかどうかわからないほど難しい課題にあえて挑戦し、退路を絶って悪戦苦闘をするとき。

人間万事塞翁が馬

こっちに来てからしていることは目標に優先順位を決めてそこに時間をかけることです。そのために5年、3年、1年後の目標、を立て、月初めには月の目標、週初めには週の目標、そして1日の初めに1日の予定を立てて行動しています。

あともう一つ最近大切に思っていることは、目標を立てたら「“今”に集中すること」です。毎日生活する中でもちろん過去に対する後悔や、未来に対する不安に押しつぶされそうになるときがあります。特に失敗をしてしまったときにそのような後悔や不安で身動きが取れないときがあります。そのようなときにはもちろん反省することも大切ですが、何か特別なことはせずいつもの毎日をいつも通りにやっていくこと、今できることに集中することが大切だと最近は感じます。
過去は悔やんでも戻ってこないし、未来は今やっていることの積み重ねだと思うので、特に苦しいときは今できることに集中して不安や後悔という感情に気を散らさないようにしています。

 

 

Q:これからの夢を教えてください。

 

窪田 世界中どこに行っても通用する人材になること。一生死ぬまでコーチングの現場に関わること。最終的に日本のコーチング文化の発展、そしてサッカーだけでなくスポーツに関わる人たちの幸せに貢献することです。そのためにこれからも初心を忘れず、様々なことを学んでいこうと思っています。

 

Q:留学を考えている人にとって貴重なお話になりました。今回はお忙しい中、インタビューを受けていただき、ありがとうございました。

 

 

 

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窪田光祐(くぼたこうすけ)

岐阜県出身

 

学歴

筑波大学第二学群 人間学類 教育学専攻

筑波大学大学院 教育研究科 英語教育コース

ラフバラ大学 スポーツ科学部

ラフバラ大学大学院 スポーツコーチング専攻

 

指導歴

手代木サッカークラブ

鹿島アントラーズつくば クリニックコーチ

ラフバラ大学 フットボール部 4軍監督

スリングストンMWFC U11 監督

ブログhttps://kosukekubota.wordpress.com/

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