第9回 アビイロード代表 浜島泰斗

「農」と「食」への理解・関心を深め、たくさんの人たちに自ら進んで農業に関わってもらえるような環境作りをしたい

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今回のライフインタビューズは、『Cocoro野ファーム』を中心に「農と食」を基盤にした地域コミュニティの拡張をめざし活動をしている、アビイロード代表の浜島泰斗さんに、お話を伺いました。

 

 

Q:cocoro野ファームを始めようと思ったきっかけ、アビイロードを設立しようと思ったきっかけは何ですか?

 

浜島:ライターの仕事の一環で、ある農家の方に取材をしたことをきっかけに農業に興味を持つようになりました。自分なりにいろいろと勉強もしましたが、就農というかたちではなく、もっと違ったやり方、自分の柄に合ったやり方で農業に貢献することができないだろうかと模索し、「アビイロード」を立ち上げました。

 

「農業コーディネーター」という今までにない立ち位置で、外からの視点で多角的に農業に関わり、農業を通じて社会貢献がしたい。「農」と「食」への理解・関心を深め、たくさんの人たちに自ら進んで農業に関わってもらえるような環境作りをしたい、というのが起業にあたっての‘思い’でした。

そのきっかけ作りの場として、まずは以前から構想にあった公園マルシェの開催を思いつき、『Cocoro野ファーム』の始動へと至りました。

 

Q:Cocoro野ファームはどのような目的を持って活動をしていますか?

 

浜島:「生産者と生活者が顔の見える関係に」というのは昨今よく耳にする言葉ですが、そこからさらに一歩踏み込んで「心も見える関係に」発展させたいという思いを込めて命名しました。

 

当初は、あくまで公園マルシェを開催するための「イベントに特化した事業形態」の一つという位置付けでした。その後、自分のビジョンと「農の現場」との意識の擦り合わせをしていく中で、少しずつ方向性というものも変化してきました。

 

マルシェだけではなく、『Cocoro野ファーム』を起点の一つにして、「農と食」「生産者と生活者」「都市と地方」「農業と福祉」など、地域社会の中で様々なつながりを育み拡げていくことを目指すための複合コミュニティのような存在、運命共同体というと少し大げさかもしれませんが、今はそんな認識で捉えています。

 

作り手の「思い」「こだわり」「苦労が見える」「素性が見える」と人は安心し、親しみや慈しみを持ちます

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Q:消費者は生産者が手作りで製品を作る苦労や大変さ、現状を知ることがほとんどありません。消費者の生産者への理解が深まることで消費の価値観はどのように変化すると思いますか?

 

浜島:私たち生活者(野菜ソムリエの基本理念では「消費者」ということばではなく「生活者」ということばを使って発信します)が、生産の現場で起こっていることを知る機会はなかなかありません。これは、現在の流通・販売のシステム上やむを得ない部分もあるのですが、これからは生産に携わる方は「伝える努力」、消費する側は「知る努力」が求められてくるでしょう。

生活者の皆さんには、まずは身近なところで農家さんとのつながりを持って頂きたいのです。

どういった栽培過程で作られているのか。興味が湧いてきたら話を聞いてみてください。

そしてその農家さんから直接買ってみることです。間違いなく普段スーパーなどで手にしている野菜よりも格段に美味しいはずです。‘採りたて’という新鮮な状態であることはもちろんですが、「素性が見える」と人は安心し、親しみや慈しみを持ちます。

対人関係も食べるものも同じです。「素性が見える」ものは安心するし、作り手の思いやこだわり、苦労などが見えるものは間違いなくおいしいのです。それが「農への関心」の第一歩ですね。葉っぱに虫食いの跡があれば、それは「無農薬で作っている証し」ということになりますから安心して食べられます。

間引いた若々しい野菜は、小さいけれどやさしい甘みとみずみずしさが溢れています。見映えに左右されることなく、ものごとの本質の部分にしっかりと目を向けること、これが真の「食育」につながりますし、子どもの頃からそういう感覚を身に着けてほしいですね。

 

農家になるのは簡単ではないが農業人には誰でもなれるのです

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Q:生活者の価値観が変化していくことで生まれる理想の地域社会とはどのようなことが考えられますか?

 

浜島:生活者の価値観が変化すれば、今まで当たり前とされてきた「慣例」が当たり前ではなくなってきます。「規格」や「見映え」が重視される流通・販売の世界の常識が、「規格外」を求める生活者の意識変革を無視できなくなれば、「規格に合わないから」という理由だけで廃棄されてしまうような作物の数も激減するはずです。

 

もし、流通や販売の意識、管轄する自治体の意識が変わらなければ、「本物」を求める多くの生活者が、自らの手で「本物」を得るために動くようになるでしょう。苦労してこだわって「本物」を作り続けている生産者たちが「正直者がばかを見る」世の中であっては絶対いけないと思っています。

 

ご縁ができた農家さんのところに通うようになると、次第に応援したいという気持ちが芽生えてくるものです。自分が口にするものですから、自分も何か役に立てることはないだろうか、という気持ちになるのは自然なことです。この「意識の変換」がものすごく大事なのです。天候不順が続くと、「野菜の値段が高騰して困るなぁ」ではなく、「〇〇さんの畑は大丈夫かなぁ」、「〇〇さんのキャベツが心配だなぁ」という発想に変わってきます。自然とそういう思考回路が働くようになればしめたもの(笑)もう立派な‘農業人’の一人です。

 

‘農業人’というのは、農家或いは農業関係者ばかりでなく、農業に感心を持ち、なんらかの形で関わっている人の総称です(と勝手に思い込んでいます)。農家になるのは簡単ではありませんが、農業人には誰でもなれるのです。小さなお子さんでもなれます。地域社会の中で「参加型農業」という意識が根付いてくれば、私が求めている「一億総農業人」という理想のゴールも‘夢ものがたり’ではなくなると信じています。

 

 

Q:それぞれの分野で活躍されている方々と関係を築くために大切にしていること、工夫していることはありますか?

 

浜島:個人事業者のビジネス目線は常に対等でなければなりません。たとえ相手が大企業の経営者であってもそれは同じです。自分で事業を動かしている以上、自分も経営者であるというプライドは常に芯の部分に持っています。

 

もちろん、相手に敬意を払い尊重することは大切です。だからといって自分を卑下しへりくだる必要はないはずです。「私如きのためにお時間を割いて頂きありがとうございます」、「私なんぞはまだまだ未熟者で…」終始このような態度で接すれば、相手はどう感じるでしょうか。「未熟者の相手を長々とするほどヒマじゃない」、「こんな頼りないヤツに仕事を任せられるのか」と思われてしまいます。自分が相手にとって必要とされる存在にならなければいけないのに、自分の値打ちを自ら下げる努力など全くナンセンスなはずです。

 

それと、どんな分野の人と接するときも、常に相手の身に自分を置き換えて考えてみること、これが大切ではないでしょうか。取材などライターの経験から学んだ、「話し上手」より「聞き上手」にならなければいけない、という姿勢はこういう時に役立ちますね。

相手から何かを学び取ろう、相手の魅力・価値を最大限に引き出そう、相手の役に立つことを見つけよう、謙虚さ、真摯さを持って話を聞きながらも、受け身・守りの態勢ばかりではなく、隙あらば見えない触手で相手の懐に飛び込む。

 

必要としている「潜在的ニーズの卵」を探り当て、「顕在化された金の卵」に磨き上げる。

これはある種の職業的快感といえるかもしれませんね(笑)

 

ファーマーズ・マーケットでは生産者が直接、自らの価値・魅力を伝える大切さにこだわりたい

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Q:第1回マルシェを開催した手応えと次回への課題を教えてください。今後、マルシェをどのように発展させていきたいですか?

 

浜島:第1回は「和光樹林公園」という素晴らしい環境で開催することができました。参加者の皆さんからも「あの環境で今後も続けて欲しい」という声を頂けたことは主催者冥利に尽きますし、もちろん今後も定期的に継続していきたいと思っています。

 

反省点としては、農産物出店スペースと飲食出店スペースが二分割されてしまったこと。

芝生内での火器使用等が認められておらず、舗装区画を使用せざるを得ませんでした。そのため、調理を伴う出店ブースをエントランス広場内に統一したのですが、芝生広場との位置関係から双方に微妙な距離感が生じてしまいました。次回は芝生広場に沿った歩道を使うことを検討しています。

 

また、公園での開催は不特定多数の来客が見込めるという立地上のアドバンテージは大きいのですが、イベントとしての統制が難しいデメリットもあります。前回は初めてということもあり、対策に詰めの甘さがあると感じました。以降は人的配置も含め、想定しうるリスク対策をしっかりと講じて、万全の態勢で臨みたいと思っています。

 

課題・反省点もありましたが、それを上回る手応えも得ることができました。公園マルシェそのもののポテンシャルは非常に大きいと感じています。今後、未開拓のいろいろな取り組みにもチャレンジしていきたいですね。

 

出店者の方々が多くのつながりを作って頂いたこと、これがとても大きな財産です。ファーマーズ・マーケットに関しては、生産者が直接自らの価値・魅力を伝える大切さには今後もこだわっていきたいです。マルシェはそのための最高の舞台ですから。もちろん、可能な限りのお手伝いはさせて頂きますが。

 

そして、一人でも多くの「ファン」を作って頂きたい。「ファン」というのは、顧客よりも一歩踏み込んだ存在ですね。先ほど申し上げたように、農作物の心配をしたり、進んで手伝いにきてくれるような存在が「ファン」なのです。

 

小さな一歩一歩の積み重ねが、着実に夢の実現へと近づくステップ

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Q:仕事をする上で、大切にしている考え方や哲学はありますか?

浜島:「夢は大きく、目標設定は小さく」ですね。思い描く夢(ゴール)は壮大でもいいのです。ですが、「目標」とは、あくまで日々小さなハードルを超えていくものだと思っています。その小さな一歩一歩の積み重ねが、着実に夢の実現へと近づくステップになっていくはずですから。

 

最初から大きな目標設定をすると、いきなりつまずいて先が見えなくなります。また、複雑な目標設定をしてしまうと、そこにたどり着くプロセスが不明瞭になってしまうことがあり、目的と手段が逆転してしまうことがあります。ストイックな管理職に多いタイプですが(笑)

 

目標は「やさしく」いたって「シンプル」に、まずは簡単にこなせることから始めることですね。どんなに簡単な目標でも、クリアすればそれなりの達成感があります。達成する喜びを習慣化していくことで、困難な問題に直面した時の姿勢もおのずと変わってくると思うのです。

 

Q:cocoro野ファームの活動の喜びはどんなときですか?

浜島:私たちは事業を通じて知り合った方々を「パートナー」と呼び、お客さまを「サポーター」と呼んでいます。『Cocoro野ファーム』では、それぞれが直接つながりを持てる立方体のようなコミュニティを目指しています。「パートナー」とは、共に生き、共に成長し、喜びも苦しみも分かち合うものだと思っています。

 

「サポーター」には、「参加する」こと「関わること」で地域の中で「自分も誰かの役に立っている」という幸福を見出してほしいと思っています。

お互いの「心」が見え「心」が寄り合う…それが確かに「見える」瞬間があります。

何にも増して得られる充足感が大きい瞬間ですね。

 

答えは自分自身の‘内側’にあり、そこに素直に向き合うことによって導き出される

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Q:それぞれの分野の方と協力をして活動をするのはとても大変なことだと思います。

活動をする上での苦労はどのようなことがありますか?また、うまくいかないとき、苦労はどうやって乗り越えますか?

 

浜島:私の場合、農業とは全く関連のない異分野からの参入ですから、まずは農家さんとのファースト・コンタクトを取る時が一番大変ですね。最近はブログやFacebookといったSNS媒体を使われている農家さんが増えてきていますが、まずはそういった所からアプローチすることが多いです。

今は少しずつつながりができてきたので、紹介というかたちも増えています。やはりこれが一番効率よいアプローチ方法ですね。信頼出来る方の紹介というのは、何よりも心強いものです。ただ、気をつけたいのは、最初から「誰か紹介してくれませんか」と言わないことですね。「信頼の担保」は地道な努力の積み重ねによって成り立つものですから。

うまくいかないとき、我々は無意識のうちに責任転嫁してしまうことがあります。

「あの人はこのプロジェクト向きではない」、「あの人とはやはり合わない」、「あの人の企画には所詮無理があった」などと・・・。私も日頃そういう考え方に陥りがちなのですが、そう考える前に、自分を顧みるようにしています。

「あの人にとってどんなメリットが見出せれば、このプロジェクトはスムーズに進むのだろうか」、「自分の話し方のどこかに、価値観を押し付けるような部分がなかっただろうか」、

たいていの答えは自分自身の‘内側’にあり、そこに素直に向き合うことによって導き出されることが多いと感じています。

まずは自分の気の持ちよう、視点を変えてみることで解決できないか、深く自問自答してみることですね。

 

究極のゴールは、国民全てが応援する‘MY農家’を持つこと

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Q:今後の夢、目標を教えてください。
浜島:さきほど述べたように、目標設定は日々細かく見直ししているので、敢えてここで申し上げることはないですね(笑)。私の思い描く究極のゴールは、「国民全てが応援する‘MY農家’を持つこと」、「夏休みの子どもたちの絵日記が、海やプールと同じくらい「畑」や「田んぼ」でいっぱいになること」ですね。夢の実現に向けて、頑張り過ぎずに、頑張ります!(笑)

 

 

 

本日はお忙しい中、貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました。Cocoro野ファーム、アビイロードのますますのご発展を祈っています。

 

 

 

 

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アビイロード代表

浜島泰斗(はまじまやすと)

 

埼玉県朝霞市出身、埼玉県新座市在住。

農業コーディネーター

地域コミュニティ活動推進プランナー

フリーライター

野菜ソムリエ

 

サラリーマン生活を経て、2012年より独立。フリーライターとして活動をしながら、2015年4月より個人事業として「アビイロード」を始動。『Cocoro野ファーム』を中心に「農と食」を基盤にした地域コミュニティの拡張をめざし活動中。

 

ブログ:http://amebro.jp/cocoronofarm

Facebook:https://www.facebook.com/cocoronofarm

 

2016年5月22日第2回『Cocoro野ファーム』マルシェ出店者募集中

cocoronofarm@yahoo.co.jp

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